フランス語で“ガラスの練り粉”を意味する「パート・ド・ヴェール (Pâte de verre)」。細かく砕いたガラスを石膏の鋳型に充填 (じゅうてん) し、窯で加熱して鋳造する成形技法の名称をさします。
パート・ド・ヴェールによるガラスは、型を用いることで複雑な造形表現ができ、ガラスの中に気泡を含むため半透明又は不透明なガラスとなり、神秘的に輝く特徴があります。この技法は、古代メソポタミアで既に開発されており、19世紀末のヨーロッパで再び脚光を浴びました。古代から現代まで衰退と復興を繰り返し、先人達が各々の調合法で制作したことから、幻の技法、秘伝の技法とも言われています。
本展では、20世紀を代表する芸術家サルバドール・ダリがフランスのガラス会社ドームの依頼でデザインをおこなったガラス作品をはじめ、パート・ド・ヴェール技法で創作活動をおこなう現代作家の作品を展示します。熱せられた小さなガラス片が溶け合うことで生まれる独特な輝きと色彩をもつガラス造形の魅力をご紹介します。
なお、本展では特別出品として、公益財団法人諸橋近代美術館所蔵のサルバドール・ダリのブロンズ彫刻作品を展示します。彫刻作品の共演によるダリの不思議な世界もお楽しみ下さい。