三重県立美術館では、1995年から99年にかけて、20世紀日本美術再見というテーマのもと、1910年代から30年代の日本美術を10年単位で総括的に検証する展覧会をシリーズで開催しました。本展は、これらの展覧会を継承して、時代の大きな転換期であった1940年代の日本美術の再検討を行おうとするものです。
1930年代から始まる戦争は多くの犠牲をうみ、1945年に日本の降伏で終結します。以後、日本はアメリカを中心とする連合国の占領下におかれ、いわゆる戦後が始まりました。
従来の日本近代美術史では、1945年の敗戦を境に「戦前」と「戦後」を分断し、このふたつの隔てられた存在はそれぞれ異なる展開を見せた時代として位置づけられてきました。しかし、造形表現を丹念に見てゆけば、たとえ社会状況が180度転回したと思われているこの時期においても、美術家たちの表現が途切れることはなく、ひとつの時間軸の中に確実に存在し、活動が続けられてきたことが理解されるはずです。
本展覧会では、1940年代に制作された絵画、彫刻、工芸、写真、建築など各分野の作品と資料とを通じて、戦争の大きな影響を受けて揺れ動いた1940年代の日本美術の諸相と特質を検証します。戦後70年という節目の年にあたって、最も捉えがたく、ゆえに最も重要な1940年代という10年間の美術史を今ここで再考し、20世紀の日本美術を見直す契機としたいと思います。