近年のマスコミュニケーションの発達に伴い、多様な活躍の場を与えられたイラストレーションには芸術的に優れたものが多く、映画、写真と並んで、美術に独立したジャンルとしての地位が認められてまいりました。なかでも、絵本の挿し絵はとりわけ高い芸術的達成を示して大きな注目を集めています。
子供の読み物としての絵本は、昨今の絵本ブームに見られるように読者層が大人にまで広がってきていますが、本来は子供たちが初めて美術の世界に触れる領域であり、常に良質であることが求められています。
北イタリアの古都ボローニャで毎年開かれる「児童図書展」に併設された「イラストレーションコンクール」は、絵本制作を目指すイラストレーターたちの発表の場として重要な位置を占め、今日の絵本挿し絵の最新の動向を知らせる公募展として高く評価されています。今年度は60ヵ国から2067人の応募があり審査の結果23ヵ国93作家(日本人12名)の作品465点が入選となりました。また今年はノンフィクションの入選者も合わせて展示いたします。
今回の展覧会によって、印刷された絵本からは計り知れない、原画の持つ微妙な表現と輝きを感じ取っていただければ幸いです。
なお今回は特別陳列として、2002年のBIBグランプリ受賞作家、エリック・バトウ(フランス)の作品も併せて展示します。