電車などで真剣に読書をしている人を見かけると、思わずチラ~リと見てしまいます。周囲の雑念をよそに、本(つまり物語)に心を奪われている人がまとう空気は独特です。本の世界がこちらの世界に漏れてきているように感じたのは古本を初めて買った時、特有の甘くすえたカビ臭い紙のニオイとその本の内容が相まって、子供の私には強烈体験でした。ここ10年ほど「読書」と「本」の周辺をテーマに、作品を作ってきました。個展のタイトルも「夢十夜」「覆面読者」「黙読荘」「留守居邸風聞集」などなど、怪しげな雰囲気が漂います。
そして今回の「蔵書島案内」です。作品の中に必ず1冊は本が登場します。本の在る風景へご案内します。 山縣寛子