杉戸洋(1970-)の描く絵画は、繊細な色彩と親しみあるモチーフによって、純粋に絵を見る喜びを喚起させてくれます。
名古屋に生まれた杉戸は、愛知県立芸術大学に学んだのち、その実力を認められて内外の多くの展覧会で紹介され、今日、日本の現代絵画では欠かすことのできない存在となっています。
杉戸の絵画は、童画のような一面を持ちながらも、絵画がこれまで培ってきた豊かな色彩表現を継承しつつ刷新するもので、その表現は近年ますます洗練されてきています。豊富なイマジネーションを生み出す画面は、リズミカルに構成され、身体が覚える喜びも伝えてきます。
また杉戸は、これまで幾度となく東北の地を歩いてスケッチを重ね、宮沢賢治がイーハトーブと称した地域の風景も描いてきました。
本展は、作家本人が宮城県美術館に触発されて制作した新作の絵画や、他の代表作と特別なしつらえによって、当館の展示空間を新しく生まれかわらせるとともに、イーハトーブを描いた作品も紹介することで、ここでしか体感できない杉戸の「作品世界」を作り上げます。