休みのときはいつも阿蘇に行き、同じところを何枚も描いた清原。また、雪の日には3日も4日も山に籠って雪景に取り組んだともいいます。このように、同じ風景でも、その時々の光、空気、色の魅力に惹かれ、湧き出る美しさを黙々と追い求めた画家、清原武則の展覧会を開催します。
清原武則(1906~1985)は熊本県上益城郡甲佐町に生まれ、熊本第一師範学校を卒業すると故郷の龍野尋常小学校に赴任、教師としてのスタートを切ります。満州の国民学校などを経て、戦後、宇土郡郡浦 (こうのうら) 村(現 宇城市三角町郡浦)へ引き揚げ、松合小学校に勤務。その後、熊本市の白川中学校に美術教師として退職するまで17年間勤めました。
油絵は師範学校時代から描き、1934年には田代順七、松岡正直と銀光会を立ち上げ、現在の公募団体「銀光会」の元を作ります。36年には文展に初入選(43年まで5回入選)。後れて東光展に出品、39、40年の受賞を経て会友に。1947年から64年までの17年間は氏が最も旺盛に活動した時期で、日展に17回入選、東光展でも会員、委員、審査員になるなどの多くの足跡を残します。
退職した年、1965年に渡欧。ヨーロッパの構築された文化に触れ、絵とは何かを改めて考え、帰国後は日展、東光展への出品を止めます。以後、何者にも捉われない自分の絵を志向し、個展とグループ展で精力的に作品を発表しながら、親しみやすく、より自由度の高い作品を次々と生み出しました。
清原作品の魅力は何と言っても豊かな色彩と漂う叙情です。細部を省いた的確な描写の上に成り立つ色彩は、画家の感覚で純度を上げながら定着し、それぞれの色は決して対立することなく微妙な色調で響き合っています。この感性溢れる造形が清原作品そのもので、豊かな色彩空間となって見る人の心にやさしく語りかけます。
本展では、1950年代から晩年までの油彩作品約50点を展示します。妙なる色彩の中にゆったりとした叙情が漂う清原武則の世界をご堪能いただければ幸いです。