女性像は、古代から現代まで描き続けられてきたテーマのひとつです。浮世絵ややまと絵の伝統を受け継ぎ、普遍的な女性の美しさを描き出すことが一般的であった女性像は、明治時代以降、美術の中心的なテーマとして大きく花開くとともに変動する社会の中で多様化していきます。
深い伝統に根ざした京都画壇でも、明治時代後半に顕著になる国家主義や家父長制度への反発、社会的弱者に対する共鳴や女性の自立を目指す動きなどを反映して、その生の姿が描き出されるようになるとともに、女性の内面をえぐるような表現がなされました。また、大正後半から昭和初期にかけては、時代を象徴するモダンガールも描かれるようになり、和洋渾然とした装いやモダンな調度品に囲まれた女性の豊かな生活が描写されました。一方、当時の日本の植民地政策を反映して異国情緒あふれる女性像も生み出されました。女性の描写は、とりもなおさず時代を表徴するものであったと言えるでしょう。
本展では、明治、大正、昭和にかけて、社会のめまぐるしい変化に鋭く反応する女性の姿を捉えて描き出した約60件の作品をご紹介します。