静寂―そこに美しき一編の風景詩が生まれる。
牛島憲之は、風景画に独自の世界観を築いた画家で、その画風には静寂感があり豊かな詩情に溢れていると評されています。浜辺、灯台、水門、並木道、工場、さらには空や雲といった何気ない風景を、美しき一編の詩に昇華させたのが牛島芸術です。
熊本県に生まれた牛島憲之(明治33[1900]年-平成9[1997]年)は、幼少の頃から風景写生に出歩いて画家を志しました。東京美術学校(現東京藝術大学)を卒業した昭和2(1927)年の第8回帝展に初入選して以来、帝展、槐樹社展、東光展、創元会展などで作品を発表しました。昭和24(1949)年に須田寿らと立軌会を結成し、以後、同会を中心に作品を発表します。昭和29(1954)年からは東京藝術大学で後進の指導にもあたりました。昭和56(1981)年には日本芸術院会員となり、昭和58(1983)年には文化勲章を受賞しています。
本展は、牛島憲之記念館を設ける府中市美術館のコレクションで構成するもので、初期から晩年にいたる画業の変遷を57点の作品で辿ります。