平成25年、世界文化遺産に登録された富士山は、古来より日本人の心を魅了し、美術の分野では、各時代の各流派によって多彩な表現で描き継がれ、現代に至るまでもっとも人気の高いテーマのひとつになっています。
豊後の南画家田能村竹田(たのむらちくでん)も、富士山を実際に見た体験と、独自の視点をよりどころとし、富士山の絵画化に挑んだ一人です。従来の竹田のおだやかな淡彩の山水図とは異なる、実験的な画風で描かれた《富士図》は、江戸時代の多くの富士図の中でも際立って異彩を放ち、若き日の竹田の意欲作として知られています。
本展では、今年2月2日に新規発行される千円普通切手の意匠に採用された、竹田の《富士図》を中心に、江戸時代の狩野派や豊後の南画、さらには横山大観などの近代日本画まで、さまざまな富士図を紹介します。
さらに、独立行政法人国立印刷局 お札と切手の博物館のご協力により、葛飾北斎《富嶽三十六景》や歌川広重《東海道五十三次》などの貴重な切手コレクションのほか、2月3日からは新切手の彫刻版面や、色刷り工程の分かる号刷り紙を併せて特別展示します。