「海界」―不在の場から―
今回の「海界」―不在の場から―は2008年高知県香美市立美術館で展覧会を開催した作品を再構成して展示いたします。
2010年山梨県のフィリア美術館でも展覧会を開催し、翌年、2011年3月11日に東日本大震災が起きました。
この作品は水底に沈んだ人々の無念の思い、残された人たちの悲しみ(silent voice)思い出の古着を纏う椅子たちと、古着を裂いて巻いた布玉(黒いミルク)、人々の記憶の糸をつないだニュースペーパーと和紙のこより(海界)で構成しました。奇しくも2011年3月の津波によって犠牲になられた方々の思いをも重ねあわせる結果となりました。
私が育った戦後の新宿の街の風景は焼けた建物の残骸と赤土の原っぱが広がり、私の中の茶色の原風景は東日本大震災の爪痕にも重なります。
この度の六本木のスペースでは穏やかな日常を暮らせることへの感謝と平和への願いをこめて、子供たちと一緒に多数の布玉を作りました。
これらのオブジェを使ったインスタレーションで、悲しみの中から希望の形に祈りを込めたレクィエムの場を、構成したいと,思います。
大坪美穂
2015年1月