日本にまだ写真技術が伝わる以前の江戸末期、長崎出島のオランダ商館の医師として日本に派遣されていたシーボルトは、川原慶賀や清水東谷をはじめとする当時の日本の絵師たちに多くの植物図を描かせました。そして、これらは後に、シーボルトの植物学上の重要な研究書『日本植物誌(フローラ・ヤポニカ)』の基になりました。 この展覧会は、シーボルトが日本の絵師たちに描かせ本国に持ち帰ったコレクションを公開するものです。彼が持ち帰ったこれらの植物画は現在、ロシア科学アカデミー・コマロフ植物学研究所に収蔵されていますが、これらが広く知られるようになったのは、ロシアが世界に向けて門戸を開き始めたここ10年間のことです。初めて来日したシーボルトのために様々な文物を描いた川原慶賀、再来日したシーボルトに雇われた狩野派の清水東谷、伝統的な手法による桂川甫賢。本展は、コマロフ植物学研究所のコレクションの中から厳選した、このような絵師たちの作品約140点により、日本の植物画の歴史をたどります。ボタニカル・アートやガーデニングの人気が高まっている今日、170年以上も前のものとは思えないほど鮮やかで繊細なこれらの作品で、日本の植物画の新たな魅力をご紹介します。