舟越保武(1912~2002)に岩手県に生まれ、盛岡中学時代にロダンに憧れて彫刻家を志しました。舟越は大理石や砂岩などの石による清楚な女性像で知られていますが、1950(昭和25)年以降は自らのカトリック信仰に裏付けられた宗教的主題の作品で独自のスタイルを確立しました。それらは崇高な美しさをたたえており、他の具象彫刻作品とは一線を画するものです。とりわけ、長崎市に設置された《長崎26殉教者記念像》や《原の城》、《ダミアン神父》は、彼の代表作というだけでなく、戦後日本の彫刻を代表する重要な作品であるといえるでしょう。
1987(昭和62)年に病気のために右半身不随となりましたが、その後10余年にわたり左手で制作を続け、それまでとは異なる迫力を持つ作品を生み出しました。
本展は、岩手県立美術館所蔵の舟越保武作品と国内の代表的な作品、および未公開のものを含む多数のドローイング等によって、舟越保武の生涯にわたる彫刻の仕事を改めて回顧し、新たな視点でその芸術の本質を捉えなおそうとする試みです。