舘鼻則孝展 伝統文化の再構築
舘鼻則孝は、1985年生まれのアーティスト。2006年に東京藝術大学美術学部工芸科に入学し、染織を専攻しました。2010年の大学卒業時に底の厚い靴(ヒールレスシューズ)を制作すると、これがレディー・ガガのスタイリストの目に留まり、専属シューメイカーとなったことで一躍脚光を浴びました。
本展覧会は、舘鼻則孝のアーティストとしての様々な側面をみせる展覧会です。いくつかの美術館に収蔵され、彼のアイコンとも言えるヒールレスシューズのほか、かんざしをモチーフとしたオブジェなど、十数点を展示いたします。
「ヒールレスシューズ」と称される私の大学卒業制作は、海外のファッション業界で注目されたところから始まりました。しかし、それは花魁の履く高下駄から着想を得たものなんです。日本の伝統的な染色技法である友禅染を学んだ大学時代には、古典に倣って着物や下駄の制作をしました。日本的な様式化された平面的な芸術と、西洋的な身体研究に基づく空間的な芸術は、相対する価値観のように感じられますが、それらが共存しているのが現代の日本でもあります。戦後の日本、西洋文化が流入してきた現代だからこそ共有できる価値観が、日本の文化価値を再構築する可能性を秘めているのではないでしょうか。
―舘鼻則孝
彼にとってヒールレスシューズは、ローカルな文化とグローバルな感覚、伝統と革新を確信犯的に行き来する、現代的な感覚を持ち合わせたアート作品なのです。