須飼秀和さんの充実した仕事には脱帽する。かって郷愁を描く画家として谷内六郎、原田泰治をあげて、次代を担うと紹介したが、そういう俗流文言は不要であり、独自の須飼の世界を築き上げている。『私だけのふるさと』(岩波書店)も『うなぎのうーちゃん だいぼうけん』(福音館)もうなぎのぼりの評価である。人も自然もどこまでも愛情を込めて描かれ微細に描かれた竹林や草木にも命の息吹を感じる。昨年の「春の訪れ」やこの本DMの作品「浜坂で見たこいのぼり」の凜とした抒情は、作家としての須飼の今を伝える静かな気迫を伝えている。 島田 誠