昭和二十一年(一九四六)、小説家・大佛次郎主宰の文芸雑誌『苦楽』が創刊されました。大佛次郎は『苦楽』の刊行によって日本ならではの美意識や培ってきた文化を世に示そうとし、雑誌の顔となる表紙絵を格調高いものにするため、清方に依頼しました。
清方はかねてより、手元で広げ間近で鑑賞する「卓上芸術」を提唱し、制作していたこともあり、久々となった雑誌の仕事に情熱を傾け、三十三点の表紙絵を描きました。
毎号の表紙絵を揃えると「美人画十二ヶ月」となるよう、月ごとの季節感を明治の庶民生活や愛読した小説、芝居の一場面とともにあらわしています。
本特別展では、清方が『苦楽』のために描いた作品を中心にご覧いただきます。