川西英(1894~1965)は現在の神戸市兵庫区に生まれ、油彩画や水彩画を独習後、山本鼎の作品に刺激されて木版画制作を始めました。神戸における創作版画家の中心的存在になった川西は、関西学院出身の北村今三や春村ただを等と版画グループ「三紅会」を1929年に結成して活動、サーカスやオペラを題材にモダンで異国情緒が感じられる作品を発表しました。代表作「神戸百景」(1933~36年)を制作したのはまさにこの時期で、モダニズム都市・神戸は創作版画運動が華麗に展開した街でした。戦後は抽象的な作品を試みた時期もあり、川西は艶やかな木版画を発表し続けて1,200点を超える作品を残しました。彼の歩みは大正・昭和期を生きた多くの日本人作家と共通する部分があるとともに、神戸の発展と密接に関わる独自性が認められます。とはいえ、制作活動の全貌が紹介される機会は、今まであまりありませんでした。本展は、知られざる初期の油彩画や資料、各年代の代表的な木版画、肉筆画の『兵庫百景』の一部と素描等約400点により構成する過去最大規模の回顧展です。神戸に根をおろし、ローカルとグローバルの両面を持った活躍をした川西英の画業を、生誕120年の節目に多くの方々に知っていただけることを願っております (前期・後期で大幅な展示替えをします)。