人の顔かたちを描く肖像画の風習は、早くも『万葉集』の中に見える。最初は、その人を追慕する礼拝像・供養像としてつくられた。肖像画の眼目は、「似る」ということにある。
鎌倉時代に貴族画家が輩出して、それを「似絵」と呼び、名品を残した。一方、怨霊思想の中に菅原道真の天神画像が生まれ、歌道の中に歌聖を謳う柿本人麻呂や名歌人の歌仙絵が流行した。
絵画史上、この肖像画は天皇・貴族・高僧・武将・女性・茶人、さまざまな広がりをもって、一ジャンルを形成している。
歴史に残る、その人を絵姿によって展望する楽しみも、看過できない。