浜田 晋氏(1926-2010)は、長年にわたり精神科医としての仕事に従事するかたわら、版画、こけしの蒐集など多彩な趣味を追究する生き方を貫きました。浜田氏は、大病院勤務の地位を離れ、下町の精神科医としての道を選び、「精神科医としてではなく、こころ医者」を目指したといいます。精神診療所のパイオニアとしてのその貢献は高く評価されていて、また多くの著書も残されております。このたび、その「こけし」を当館にご寄贈いただきました。
浜田氏の言葉を見つけました。
『賽の河原のような仕事の連続で疲れはて絶望的になることがしばしばありました。そんな中、私を励ましてくれたいくつかの力があります』
こけしが、浜田氏を励ますそのひとつであったことでしょう。
もう一つ、心に残る浜田氏の言葉がありました。
『その蒐集の過程で、多くの作家さんや画商の方々と親交を温めることが出来ました。一精神科医が多くの方々との出会いとともに集めたものです。』
コレクションは、ひとりの個人の足跡のようでありますが、その足跡はその個人が関わった多くの仲間と紡いできたものでもあるのでしょう。