浅井忠(1856年~1907年:安政3年~明治40年)は、佐倉藩士・浅井伊織常明の長男として、江戸の佐倉藩中屋敷に生まれました。1863(文久3)年、一家をあげて佐倉に移り、少年期の約10年間をこの地で過ごし、この間に佐倉藩士の黒沼槐山から日本画を学んでいます。1873(明治6)年に上京、工部美術学校でイタリア人画家アントニオ・フォンタネージから本格的な西洋の美術教育を受けます。1889(明治22)年には、国内初となる洋風美術団体・明治美術会の創立に参加し、洋画界の中心的な存在となりました。1900(明治33)年、東京美術学校(現在の東京藝術大学)の教授だった浅井は、文部省の命を受け、ヨーロッパに留学します。帰国後、京都に移住し、京都高等工芸学校や聖護院洋画研究所、関西美術院において梅原龍三郎や安井曽太郎など、後進の指導にあたりました。
本展は、佐倉市立美術館の開館20周年記念事業として、浅井忠ゆかりの地である佐倉において、初期から晩年までの代表的な油彩画、水彩画を展覧します。あわせて、佐倉市立美術館が所蔵する浅井の工芸図案とその作品、浅井が設立した図案家と若手の漆芸家たちの研究団体・京漆園の関係資料などをご紹介いたします。「佐倉学」として郷土から生まれた日本近代洋画の先駆者の業績を振り返るとともに、夏休みのこの機会に多くの子どもたちにも浅井忠の作品を見ていただきたいと考えています。