ベルナール・ビュフェ美術館では、浮世絵師・歌川広重(1797-1858)による保永堂版「東海道五拾三次」と、広重の作品にインスピレーションを得た現代作家たちによる作品を紹介する展覧会を開催いたします。
広重の最高傑作として知られる保永堂版「東海道五拾三次」は、街道沿いの土地の風土を、四季の移り変わりや時間とともに、詩情あふれる描写で描き出します。広重による「東海道五拾三次」は、それぞれの土地の風景のなかに、多彩で豊かな人物描写があることでも知られ、その人間味溢れる作品世界は、現代においても多くの作家たちの心をとらえています。
イケムラレイコ(1951-)はヨーロッパを拠点とした活動を行う、人間の存在を根源的に問い続けてきた作家です。震災以降、日本の原風景を描き出したと言われる広重の「東海道五拾三次」と対話をはじめ、自身の詩とともに、新たなシリーズを生み出しています。
山口晃(1969-)は、大和絵風の細密画のなかに、武士や現代人を共存させ、過去の様式と対話しながら、近代批判の精神をユーモラスに描きます。山口は三島周辺で目にした三嶋大社や神社などを、独自の解釈で表現し、新しい風景をつくり出しています。
竹﨑和征(1976-)は、「広重はぼくのヒーロー」と語り、三島周辺に滞在し、魅了された源兵衛川や柿田川で感じた風景を、自身がとらえた事象を、絵画とインスタレーションとして構築します。
本展覧会では、広重の「東海道五拾三次」の魅力を再発見し、現代作家たちの作品とともに、来館者それぞれの原風景についても考える機会となれば幸いです。