ロンドンの大英博物館は、所蔵される数多くのギリシャ彫刻やエジプト美術の傑作を通じてあまりにも有名です。けれども同時にヨーロッパ素描芸術の宝庫であることはあまり知られていません。本展は、大英博物館版画素描部の膨大なコレクションの中より、フランス16世紀から18世紀までの巨匠たちによる素描101点を精選して展示するものです。
フランス王フランソワ1世は、1530年頃からフォンテーヌブロー宮殿にイタリアの有力画家を呼び集め、ここにマニエリスムの巨匠ロッソ・フィオレンティーノらを中心とするフォンテーヌブロー派の芸術が花開きました。フランスは16世紀後半の宗教戦争により荒廃しましたが、アンリ4世やルイ13世により国土は復興し、太陽王類14世の治世にはヴェルサイユ宮殿を中心に華麗な宮廷絵巻が繰り広げられました。その間に典雅で荘重なフランス古典主義芸術が発展し、ルイ15世の時代になると、より軽快で感覚的なロココ芸術に姿を変えていきました。
本展では、16世紀のフォンテーヌブロー派の作品に始まり、17世紀の個性的な芸術家カロ、18世紀のブーシェの作品を紹介いたします。フランスならではの繊細な感覚に貫かれた素描芸術の多様性と、創造の現場に直接立ち会える素描のみがもつ親密な魅力をお楽しみください。