自然の風景の中に美しい花々がハーモニーを奏でるイングリッシュ・ガーデン(英国式庭園)。日本でも人気の高いイングリッシュ・ガーデンは、イギリスの輝かしい歴史と文化の中で様々な遍歴をとげました。庭園を彩る植物の多くは、大航海時代以来、その美しさやエキゾチックな異世界に魅せられた人々の冒険と探求の結晶として世界中から集められたものです。絶え間ない植物研究と庭づくりに対する情熱が、今日の豊かな発展へと繋がっているのです。
イギリスにもたらされた植物は、人々の鑑賞熱の高まりとともに観察にもとづく精緻さと芸術性が融合した植物画として盛んに描かれるようになり、さらに、花々はデザイナーたちを魅了し、室内調度、食器や服飾、庭のデザインという形で、私たちの日常生活に彩りを添えています。
本展では、イングリッシュ・ガーデンの成立に寄与した多くの立役者たちに注目しながら、数世紀にわたって人々が抱いてきた植物に対する情熱の遍歴をひも解いていきます。世界最大のボタニカル・アート・コレクションを誇るキュー王立植物園の全面的な協力を得て、学術的価値と芸術性を備えた17世紀から現代までの貴重な植物画を紹介するほか、それらの影響を受けて展開したウィリアム・モリスほかの幅広いデザイン分野の仕事などもあわせて紹介します。
また、特別展示として下関市立美術館が収蔵する高島北海資料から、日本画家であり植物学にも精通していた高島北海の「植物細密画」を一堂にご紹介します。