深沢幸雄は、戦後の日本を代表する銅版画の巨匠です。駒井哲郎や浜田知明に魅せられて独学で銅版画を始め、これまで数多くの展覧会を開催してきました。国内のみならず、海外での活躍にも目を見張るものがあり、第3回フィレンツェ国際版画ビエンナーレでバンコ・デ・ローマ賞を受賞するほか、メキシコでは銅版画技法の指導を行い、その功績によりメキシコ政府から文化勲章を受章するなど、国際的にも高い評価を得ています。
「技法の神様」とも呼ばれるほど銅版画のさまざまな技法を駆使した深沢の作品は、人間の内面を見つめた深い精神性が感じられるものから、ユーモアのセンスが光るものまで、実にさまざまです。また、『春と修羅』をはじめとする詩画集も多数制作しており、叙情的で物語性あふれる作風も大きな魅力となっています。
このたびの展覧会は、深沢の生誕90周年を記念して、当館の収蔵品をご紹介するものです。1993(平成5)年に開催した「銅版画の驍将 (ぎょうしょう)―深沢幸雄」展以来、深沢の作品が当館で一堂に展示されるのは実に21年ぶりとなります。
「技法の神様」による銅版画の魅力を、どうぞお楽しみください。