鹿追町ひいては十勝の絵画ファンにぜひ紹介したい幾人かの作家がいる。中村智恵美氏とその作品もそのひとつである。僕が最初にその作品に接してからもう8年近くが経過している。初対面であった東京都美術館の女流画家展会場でいただいた光画廊での個展の案内状が気になり、銀座に歩を進めて初めて鮮やかな花の世界に魅せられた。それ以来僕は独立展に関連した幾つかの企画を担当したが、独立展の本展と同時期に開催される二紀展に出品される中村作品に出会うことが楽しみであった。画面に浮かび出る鮮やかな花の輝き、堅牢な構成、何度の個展やグループ展を訪ねる度に充実の度を深めるその作品世界を我が美術館で再現する日の到来を待望した。限られた空間の小品展ではあるが、この展覧会が実現したことは僕にとって大きな喜びであり、同時に必ずや鑑賞者に感動をもたらすものと信じる。
神田日勝記念美術館長 菅 訓章
深まり増す魅力-中村智恵美の花々たち
100号を中心に50号30号から小品まで、20点ほどによる発表。モティフは花弁や果実等の静物画作品で纏められている。青を基調色とするそれらは堅確な構成力によって、その存在感を深めている。
すべては感動からはじまるとは彼女のみならず、多くの表現者にとっての大いなるモティベーションであるが、制作の原点となる感動に馴れることなく、常に新たな思いを抱くことで花々に瑞々しい生命を顕現せしめている。落ち着きのある彩りの奥からにじみでる華やぎ、確かな構成にたゆとう光と気。中村千恵美の魅力は、いよいよ深まりゆくそれらの冴えにあろう。
美術評論家 中野 中