川越出身の画家、岩﨑勝平(明治38-昭和39年、1905-64)が没して本年で50年を迎えます。
本郷洋画研究所で岡田三郎助に、東京美術学校(現東京藝術大学)で藤島武二に学んだ岩﨑は、昭和11年に《小憩》が文展初入選を果たして以降、人物画を主体に官展画家として活躍を始めます。しかし、昭和13年に支援者であった叔父・福沢桃介が、同15年に父親が没したことで経済的基盤を失い、さらに同16年には先輩画家の娘であった妻の死を巡って確執が生じたことで、岩﨑は画壇から距離を置くようになります。それでも画家であることにプライドを持ち続けた岩﨑は、極貧の中で知己となった評論家・河北倫明や小説家・川端康成などと交流を重ねながら制作を続け、波瀾の後半生を送りました。
地元川越では、実際に交流した方々を中心に、岩﨑の個性的な人物像が数々のエピソードとともに語られてきました。しかし一方で、没後50年が経過した今、その存在が徐々に風化しつつあるのも事実です。
そこで本展では、この節目の年を契機に、岩﨑の現存する代表作品および関連資料を100点あまり一堂に展示し、改めてその画業の軌跡を辿ります。さらに現時点で収集し得た画家と直接関わった人びとの証言をとおして、等身大の岩﨑勝平に迫ります。
岩﨑を知る方々がもう一度彼に思いを馳せ、あるいは、知らない方々の記憶に画家の名が刻まれる機会となれば幸いです。