ポール・シニャック(1863-1935)は、19世紀末から20世紀初頭にかけてフランスで活動した新印象派の画家です。新印象派を代表する画家として、当時のさまざまな美術理論を学び、それらの理論に基づきながら、カンヴァス上に小さな点を並べる点描技法を駆使して油絵を描いていたシニャックですが、彼はより自由でより手軽な水彩画にも魅了され、たびたび水彩を携えてスケッチ旅行に出かけていました。その旅行先はフランス国内にとどまらず、オランダやイタリアなどヨーロッパ各地になっています。とはいえシニャックにとっての水彩画は、単なる覚書や記録というだけではなく、人に見せるに値する「作品」でした。そしてそのような意識のもと、彼は水彩画での連作にも取り組んでいました。本展ではこのようなシニャックの水彩画を紹介します。