私たちは、日々を生きてゆく中で、いくつもの不思議に出合いますが、そこに在る自然の摂理を知ったときに、積年の疑問がするすると解けたり、すとんと腑に落ちたりすることがあります。三嶽伊紗は、心の底にある不思議とじっくりと向き合い、つかみ取ったものを科学の言葉で説明する代わりに、目に見えるかたちにして表現し、人に伝えるというしごとをしてきました。
アトリエを構える湖西地方や近県の豊かな自然は、この作家の尽きぬ好奇心を大らかに受け容れ、作家は好んで散策をし、見て、考え、そこから数々の知的で美しい作品を生み出しました。
気が向けば、車で遠くまで出かけて行くこともしばしばで、とりわけ雪が舞いはじめると、じっとしてはいられません。
2007年以降は、まるで夢の中にいるような、叙情的でロマンティックな映像作品も手がけています。
静かな映像をしばらくじっと観ていると、やがて映像が作家によって手を加えられていることに気づかされ、作品の中でしか実現しない時間の重層/重奏を深く味わうことができます。
「みること」に始まり、現前するものを超えた世界の深みへと誘う作品群で構成される本展は、つよい探求心から生まれた三嶽伊紗のしごとを眺めわたせる内容となっており、美しい映像作品の展示は圧巻です。