ボックス・アート。聞きなれない言葉だと思いますが、読んで字のごとく、箱(ボックス)の芸術です。といっても、硯箱や文箱といった工芸的なものではなく箱が持つ内部空間の神秘性やその存在感を芸術表現として取り入れた作品のことをさします。
20世紀に入り、ボックスが芸術表現の新たな支持体となったとき、感動的なまでに表現の可能性が広がりました。絵画を飾るための額縁が少し厚味を持っただけで、描くだけではなく、写真を貼り、オブジェを配置し、その中で心の赴くままに自由に遊ぶことができる、何やら不可思議な空間がそこに生まれたのです。それは、まるでひとつの劇場のようでもあります。フルクサスのメンバーたちはボックスによる知的なゲームを楽しみ、ジョゼフ・コーネルはそのなかに謎めいた小字宙を形成しました。以後も現代に至るまで多くの作家たちがこの徹妙な空間を孕んだボックスに魅せられ、様々な魅力溢れる作品を生み出しました。
本展覧会では、コーネルをはじめ国内外の代表的な作家から、日本の若手のアーティストまで32名の作家による約140点の作品によりBOX ARTの世界をご紹介します。愛らしいもの、機知に富んだもの、幻想的なもの、ボックスが見せる様々な表情による「ポータブルな劇場空間」をお楽しみください。