タイトル等
air to air resonance ―共振―
井田 彪展
会場
SPACE5 MARONIE
会期
2013-10-29~2013-11-10
休催日
月曜
開催時間
12:00~19:00
最終日18:00まで
概要
時間と空間のはざまの生―或いは新たな空間の予言記号

井田彪の作品には、何べん見直しても、私たちの世界における、いわゆる対象は存在しない。したがって孤立した立体造形という言葉で称するのはふさわしくないのかもしれない。強いて言えば「切り取られた空間」と言えるのだろうか。そう確かに1990年代までの作品はそう表現してもよかったのかもしれない。表情の異なる石とコールテン鋼とで会話される「air to air」の空間であったり、空間分離を目的としたコールテン鋼の断層が「air to air」の空間を可視化させていた。それは空間を可視化させる装置で、空間を意識的に限定することで見えてくる私たちを取り巻く文字通り「空間世界」の可視化である。と同時に異なる表情の対が美術を約束していた。
そのとき井田彪の眼には、井田の世界の対象物して、「空間世界」があったと思える。触媒となる air を井田彪自身が意識化することで対象空間を認知化するものであった。
しかし今回試みられようとするイメージ図を見る限りにおいては、そこに新たな展開が潜んでいることを見逃すことはできない。今日見る逆円錐にイメージされた形態と、釘状の円錐棒からは、空間の境目は存在せず、時間の連続する動きがイメージされる空間内で提示されている。
井田の眼は作品の中にありつつも、同時に望遠な外からの視点でもある。位相視点といえるだろう。時間的にも過去へ、未来にと瞬時にして移動可能な視点である。また非バランス故のバランスは、作品自体が触媒となり、多層な次元空間への共振を伝えてくれる。
井田彪が今回語る世界は、形として見せる「空間」ではなく、形は美術としてはそぎ落され、その代り芯棒として「空間」を私たちの五感に共振させてくれる。美術よりもっと大きな意味でそれは感じさせるための「空間軸」なのではないだろうか。なぜなら「空間」自体は、形に帰結できぬ世界であるのだから。
かつてギリシアの地では、哲学が人々の明日を見るための予言の言葉であったように、井田彪の造形形態へ至る「空間」の骨子は、遠くない未来の予言の言葉なのかもしれない。私たちの意識が、マクロ的に、ミクロ的に、時間と空間の中でどのように自己決定せねばならぬかを、見定めるためのものとして。そして私たちの「見ることの意味」は、岐路に立たされている。創造された「空間」は単に見るものではなく、見る側においても、その場で「自己決定」するための「空間」となっていると井田彪は語っている。井田の提唱する「air to air」のもう一方にいるものは私たちである。
尾崎眞人 (美術評論家)
ホームページ
http://www.gallery-maronie.com/next-space5/1956/
会場住所
〒604-8027
京都府京都市中京区河原町通四条上ル塩屋町332
交通案内
[最寄り駅] 阪急河原町駅より徒歩5分
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京都府京都市中京区河原町通四条上ル塩屋町332
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