当館では、美術館の基本理念のひとつである「新しい美術を創造する未来志向の美術館」に基づき、平成22年度より「注目作家紹介プログラム チャンネル」を開催しています。毎回、学芸員が注目の作家を紹介している本展ですが、4年目を迎える今回は、兵庫県出身の彫刻家・小林且典 (こばやし・かつのり/1961年龍野市生まれ) の個展を開催します。
小林は、イタリア留学時に魅せられた蝋型鋳造により瓶・皿・壷等の日常生活の中にある身近なものを表現してきました。自身のアトリエで鋳造できるよう改良に改良を重ねたブロンズの作品は、時を重ねたものが持つ親密で温かい気配をまとい、ひっそりと佇むその姿は、我々に時間という概念を忘れさせます。また、小林は、それらの作品を配した空間をアトリエ内に創出し、自作レンズによるカメラで撮影した「静物の世界」をフィルムに焼き付けます。
兵庫県初の個展となる本展では、天井高7m20cmのアトリエ1の空間を活かし、床面中央には膨大な数のブロンズと木彫の作品を配し、壁面にはカラープリントの新作を軸に、モノクロプリントも併せて紹介。その他、フィンランドの滞在以来制作に加わった木彫、蝋型鋳造によるブロンズも展示します。
小林の手と眼差しを通して創り出される半透明の世界、その空間に漂う美の余韻に身を委ねていただければ幸いです。