深井克美は1948(昭和23)年に函館で生まれ、幼くして父を亡くし、母の下で東京で育ちました。生来病気がちで小学校を一年遅れで卒業し、中学校も病院内分教室で学んだ時期がありました。こうした中で美術に関心を持つようになり、自由美術展で西八郎の作品に感銘を受け、同氏に師事。また、一時期は武蔵野美術学園などにも通っています。やがて自由美術展を主な舞台に作品を発表するようになります。細かなタッチと寒色を主とした色彩により、内面の叫びが聞こえてくるような人物像や分裂・融合する身体、あるいは荒涼とした光景を描き、青春の苦悩と哀しみの中に美しさを秘めた、独自の画風を確立しました。30歳の若さで自ら命を絶った深井克美の作品は、死後、遺作展や回顧展、文章を通じて脚光を浴び、熱烈なファンを生んでいます。当館では久しぶりのまとまった形での展示となりますが、彼の作品に見られる、人生への不安と懊悩、孤独、絶望、その中にある希望といったようなものは、人間の、ことに若者の普遍的なテーマと言えるでしょう。あわせて本展覧会では、深井克美が主に取り組んだ「人間像」を描いた他作家の作品も取り上げ、悩み、苦しみながらもなお進んでいくその姿をご紹介します。