1883(明治16)年、京都に生まれた北大路魯山人 (きたおおじろさんじん)。美を愛し、食を愛した昭和の巨人が遺した作品は、歿後半世紀を経た今もなお国内外の多くの人びとを魅了してやみません。
茅ヶ崎市美術館では開館15年と北大路魯山人生誕130年を記念して、多彩で奔放な魯山人芸術をご覧いただく企画展「魯山人の宇宙」を開催します。
魯山人は、まず書に才能をあらわし、あわせて篆刻家 (てんこくか) としてその名を高めてゆきました。パトロンともなった風流人たちとの出会いから美食に目覚め、料理を彩る陶磁器への関心を育みます。四十代からの作陶と遅いスタートでありながら、織部 (おりべ)、志野 (しの)、黄瀬戸 (きせと)、備前 (びぜん)、染付 (そめつけ) などさまざまな分野において、もちまえの美意識を貫き魯山人独自の器を生み出しました。
本展でご紹介するカワシマ・コレクションは、アメリカで魯山人が評価されるきっかけをもたらしたシドニー・B・カドーゾ氏の収集品を基に、サンディエゴ在住のアートコレクターであるモーリス・河島氏がつくり上げた秘蔵の名品群で、2003年の里帰りまで日本国内での公開はなされてきませんでした。
カドーゾ氏は北鎌倉・山崎の星岡窯 (せいこうよう) で魯山人とともに窯に入り、その場で作品を選択したと伝えられており、そのほとんどが未使用のまま大切に保存されてきたものです。
このたびの展覧会では、現在は笠間日動美術館コレクションの一部となっているカワシマ・コレクションと、従来から日本有数の魯山人作品コレクションであった同館収蔵作品のなかから選りすぐりの作品約85点を展示し、多種多様な陶芸作品とともに、書、篆刻、絵画、漆芸 (しつげい) 作品などによって構成される「魯山人の宇宙」を紹介いたします。