横尾忠則(1936年、兵庫県生まれ)は、第一線で活躍するグラフィック・デザイナー、美術家です。織物の町、兵庫県西脇市に生まれ育った横尾は、高校生時代からポスターを作り始め、地元で注目を集めていました。しかし本格的にデザイナーの道を歩み始めるのは1960年に上京してからです。舞踏家・土方巽、劇団状況劇場の唐十郎、天井桟敷の寺山修司、そして作家・三島由紀夫などとの出会いから生まれた、独特なイラストとデザイン感覚にあふれるポスターは、たちまち若い世代の支持を集め、大衆文化を代表する寵児となりました。
その後、デザイナーとしての仕事は、ポスターからイラストレーション、ブックデザインなどさまざまな印刷メディアへと展開し、さらに絵画や版画、映画といった芸術分野にまで広がっていきました。小説も書き、最近はブログやツイッターでも盛んに発信し続けています。マルチな才能は留まるところを知りません。横尾のエネルギッシュな活動の原動力はいったいどこにあるのでしょう。
今回の展覧会では、このように広範囲にわたる横尾忠則の仕事の中でも、出発点として常に彼の創作活動の中心にあったポスターに焦点をあてます。1950年代の初期作品から2010年に至るまでの、約60年間に制作された全ポスターを所蔵する国立国際美術館のコレクションを中心に、その後の最新作ポスター、原画や色指定紙等の資料も含め約400点を展示し、その原点と全体像をご覧いただきます。