子どもたちにとって、絵本ははじめて出会う視覚表現、まさにはじめての美術です。
宮城県美術館は一万枚以上に及ぶ国内有数の絵本原画コレクションを所蔵しています。その核となっているのは、福音館書店の月刊絵本「こどものとも」の原画です。子どもに上質の絵本を届けるという理念のもとに生まれた「こどものとも」には、日本画家、洋画家、彫刻家、漫画家、ジャンルを特定できない気鋭の作家ら、それまで子どもの本の絵を描いたことのなかった美術界のそうそうたる顔ぶれが原画を寄せています。
作家たちにとって、印刷して完成する絵本は、日々の制作のジャンルを超えたはじめての舞台でした。絵本になったときの効果を最優先に考えて制作される原画は、作家がふだん取り入れることのない技法・表現も用いられており、時には印刷技術さえも技法の一部に取り込まれています。
この展覧会では、当館コレクションの代表作を含め広い範囲から作品を選定し、26作家、43タイトル、約320点の原画を展示いたします。それぞれの絵本原画の中に広がる世界をご覧いただくとともに、絵本原画の世界ならではの工夫の凝らされた表現をお楽しみください。