現在、肉筆作品と資料を合わせて約三〇〇〇点を数える夢二郷土美術館の収蔵品は、当館の創設者であり、初代館長をつとめた松田基 (もとい) のコレクションを母体に築かれたものです。松田は、竹久夢二(一八八四~一九三四)の他にも、広く芸術に関心を持ち、蒐集を行いました。「松田基コレクション」展は、年に一度、テーマを設けてその一部を紹介するものです。本年は福井良之助(一九二三~一九八六)の作品を特別公開すると同時に、夢二の作品を展観します。
福井良之助は、独特の色調と質感を持つ油彩画と孔版画で知られます。静謐と緊張を湛える画には、福井が一貫して追い求めた、表裏一体の生と死というテーマが常に内包されています。
松田基は、福井と夢二の作品を共に愛し、身近に置いていました。二人の作品を並べてみることで見出される異同と共通は、松田の人となりをも語ってくれるのではないでしょうか。福井の八〇号の大作《舞》や、夢二の《早春》《童子》など、コレクションの中でも選りすぐりの名品をご覧いただきます。