竹久夢二(1884~1934)は、新聞や雑誌の余白に挿しこまれる、紙面とは独立した内容の木版画―コマ絵でデビューし、人気を得ました。夢二はこうした、コマ絵にはじまる小さな木版画を「草(艸)画 (そうが)」と呼び、芸術の一分野であると述べました。本来は略筆の水墨画を意味する「草画」を、夢二は独自の表現を意味する言葉として位置づけようとし、それは日本画、油彩、水彩、ペン画と、表現方法や画面の大小を問わず繰り広げた自身の画業全般に通じる考え方を表す言葉ともなりました。
今回は、コマ絵を手はじめに、挿絵、装幀などといった印刷物の仕事から、彫師・摺師と協働して制作した手摺り木版画や紙小物まで、「版」を用いた仕事を広くご紹介します。夢二が手がけた「セノオ楽譜」表紙絵の原画と仕上がりを比較するコーナーや、印刷技法についての解説などを交えながら、身近なその魅力に触れていただきます。