草花や昆虫、鳥、動物などを描く花鳥画は、中国でジャンルとして成立し、東洋で広く育まれました。日本では、渡来した中国の禅僧たちの影響に始まりますが、桃山時代には狩野派や長谷川派によって大建築の装飾画として盛んに描かれ、近世以降、四季の風物を理想化して描き出す飛躍的な展開をみせます。また、中国人画家・沈南蘋(しんなんぴん)によってもたらされた細密で迫真的な花鳥画は、18世紀の画家たちに積極的にとり入れられました。本展では、原六郎コレクションより、三井寺日光院(みいでらにっこういん)客殿をかつて飾った狩野派による水墨の障壁画、濃密な色彩で描かれた沈南蘋の掛幅などに現代美術をとりあわせ、花鳥動物画の一端を紹介いたします。伝統的な東洋の花鳥画と現代の美術では、同じ動植物をモチーフにした作品であっても、表現方法はもちろん、対象に向けられた眼差しも異なります。あらゆる生きものに託された多様なメッセージに思いを巡らせ、鑑賞を深めていただければ幸いです。