当館の「服部一郎記念室」は、若くして世を去った服部一郎(1932-1987)が、その眼で選び、こよなく愛した作品の数々を順次ご紹介しております。今回はコレクションの中から安田登紀子(ときこ)氏(昭和7[1932]年生-現在80歳)による仏画をご紹介いたします。安田氏は画壇に属さず、独学で画風を模索してきた画家で、一貫して仏さまの世界をテーマに制作を続けてきました。この度、作品調査の過程で、安田氏が服部一郎の学友である学習院長・波多野敬雄(はたのよしお)氏のいとこであることが分かり、服部一郎と安田氏との出会いが明らかとなりました。本展覧会では当館理事長所蔵作品と、安田氏ご所蔵作品とを合わせて展示し、安田登紀子氏の画業を画風展開とともにたどります。
20数点の出品作品を技法ごとに3章構成で展示いたします。第1章では30歳の頃に独学で仏画を描き始めた安田氏が、最初に手掛けた金泥(きんでい)(金色の絵具のこと)による小品を、第2章では国宝・重要文化財の仏像の写生を追及する中で生み出された彩色画を、そして第3章では自我を捨て去る仏画をめざした安田氏がたどりついた墨絵の世界をご覧いただきます。古仏(こぶつ)と真摯に向かい合った仏像画家の世界をご堪能ください。