■黒田克正の世界 宝木範義
黒田克正の画面では、何よりもスケール感に圧倒される。この第一印象は30歳代、独立展の絵に大きなストロークで黒々と主題を塗り込めた頃も、その後団体展から離れ、第17回日本国際美術展大賞を得た、イメージの豊穣が衝撃的だった時も、そして一昨年のギャルリー東京ユマニテ個展で、色面と線のコラボレーションが感性と身体性の成熟したバランスを示した中でも、一貫して持ち続けられた彼の個性であり、資質であった。
ここ紀伊國屋画廊での個展は、実は30歳代半ばのそれ以来、およそ35年ぶりとなる。
事前の個人的なコメントに「線は奔放で時に抑えが利かない。日々に変化するイメージの中で、色面が線に着かず離れず浮遊してくる。どちらも従属させたくない。しかし有機的な関連は保たせていたい」とあったが、イメージの赴くまま、自然体の制作を維持して今日ここに至った、黒田克正の歩みに脱帽する。