わが国における近現代の文芸書の造本に目を向けると、様々な書物文化の諸相が見えてきます。そこには西欧の芸術運動の影響を受けながらも日本の伝統美との融合を図った美しい書物が多数見られます。また他方で著者自らの考えによって制作された抑制のきいた美しさを持つ書物も見られます。さらに画家の個性の表出によって包まれた書物や、装丁家によって制作された書物までと、近現代における文芸書の造本の世界は、言葉(文学)と形(美術)の関係が書物を通して自由に混じり合い、豊かな視覚造形の世界を作り上げています。本展では当館所蔵のコレクションの中から約二五〇点を選び、これらの書物を「造本の美」「装丁の美」「本文組の美」の三つの視点からとらえ直し、明治から昭和までの間で、主に活版印刷によって制作され出版された「書物の美しさ」を探ります。書物に見いだす美の世界をご覧下さい。