絵画作品のほとんどは、画家の筆とパレットによって描かれています。キャンバス上のすべての色は、もともとパレットに置かれた絵具です。物質である絵具がパレットを経由してキャンバスに移されることによって初めて生き生きとした作品となります。パレットは物質と芸術の境界にあり、画家と作品の境界にあるものです。表現者の思いや感情、意図を、描画という技術により画面に映しだします。そして、様々な表現がひとつのパレットから生まれてきます。そこには、画家による創作の秘密が隠されています。約2200点に及ぶコレクションを持つ笠間日動美術館。その中には専門家ばかりでなく美術愛好家にも好評を得ている342作家に及ぶパレット画のコレクションがあります。ほとんどのパレットには、その画家の好む主題が描かれており、小品ながらも楽しい展示物として親しまれています。今回、そのコレクションから、梅原龍三郎や安井曽太郎をはじめとする日本近代洋画の巨匠たちに、ピカソ、ダリなど海外作家をあわせて展示します。長年使い込まれたパレットからは、作家が作品に注いだ情熱が否応なく伝わってきます。そして色とりどりにちりばめられた絵具の筆跡からは、作家の個性や制作の秘密までもが窺えます。