ジャン・シメオン・シャルダン(1699-1779)は、フランスを代表する静物・風俗画の巨匠です。わが国で初めてのシャルダンの個展となる本展は、ルーヴル美術館名誉館長ピエール・ローザンベールの監修により、厳選した作品のみで構成されます。晩年の静物画の最高傑作であり、個人所蔵のため普段は非公開の《木いちごの籠》、シャルダンの最も美しい作品と言われる《羽根を持つ少女》はともに日本初公開となります。また、1740年にシャルダンが国王ルイ15世に謁見を許され献呈した《食前の祈り》は、その後各国の王侯貴族が競って入手しようとし、注文が殺到しました。同主題の作品は4点のみ現存し、そのうちロシアの女帝エカチェリーナが愛蔵した作品と、シャルダンの未亡人が亡くなるまで手元に残した作品が出品されます。食前に捧げる感謝の祈り(ベネディシテ)の途中で言葉に詰まってしまった幼い子、それを見守る母と姉の視線が交わされる瞬間を描いた《食前の祈り》のように、本展は、日常生活のなかの絶妙な瞬間の描写が評価されたシャルダンの秀作を纏まった形で鑑賞する極めて贅沢で稀有な機会となるでしょう。