明治時代に入ると明治政府が推し進める殖産興業・輸出振興政策により、数多くの日本の陶磁器が欧米を中心に輸出されていくこととなりました。また当時欧米で盛んに開催されるようになった万国博覧会にも出品され、高い評価を得ていきます。高い技術と東洋的なモチーフなどによる写実的で絢爛豪華な作品は、ジャポニスムの気運を高め、欧米のやきものに大きな影響を与えるとともに、後のアール・ヌーヴォー、アール・デコへとつながっていくきっかけとなったのです。
このような状況の中で、日本の各産地では西洋技術の導入や窯業技術の近代化などの変革がなされていきます。加えて実業教育や工芸美術教育が積極的に推し進められ、それまでとは全く異なった様相を生み出していきました。また一方で、江戸時代からの職人技のやきものからの脱却も進み、美術工芸的な作品づくりを行う陶芸作家が登場していくこととなります。
本展覧会では、日本窯業・陶芸史上、重要な位置付けがなされる明治時代から大正時代にかけて制作された日本の陶磁の変遷をご覧いただきます。輸出陶磁の全盛期である明治時代前期に輸出された日本各地の陶磁器を、里帰り品を中心として一堂に展示します。そして明治20~30年代にかけて各産地の自立と競争の中で生み出されていった新たな陶磁器や、明治30年代以降のアール・ヌーヴォー、アール・デコに代表される新しい意匠・デザインの作品、帝室技芸員そして陶芸作家の黎明期の作品など、近年の新たな研究成果を踏まえながら紹介するものです。