版画作家としてのマルク・シャガール(1887―1985)を考えると、版画の技法を身につけたのが30歳代半ばになってからということなので、その出だしが比較的遅かったのは案外なことのように感じられます。しかしながら、ほとんど一世紀に及ぶ生涯を通じて衰えを知らない創作意欲を維持し続け、油彩画はもちろんのことモザイク、タピスリー、ステンドグラス、陶器、舞台装飾など多岐を極める活動を繰り広げ、版画をかぞえただけでも2000点もの作品を遺したのですから、やはり凡百の画家を凌ぐ大作家シャガールであったといえましょう。
本展は、シャガールの60歳代以降、すでに世界的名声を獲得し、やがて円熟の晩年へと至る時代に世に贈られた7つのシリーズ版画、あわせて266点を展覧いたします。