歴代の天皇はみずからの手で多くの作品をのこしています。とりわけ、天皇の書は「宸翰」とよばれ、プライベートなものから、国家の安泰を願うものまで、じつにバラエティー豊かです。いずれもが帝王としての気品と風格をそなえており、まさに「書の王者」といっても過言ではありません。
世の中に宸翰と伝えられるものは驚くほどたくさんありますが、この展覧会では、奈良から昭和時代までの紛うことなき宸翰、百四十件ちかくが一堂にまみえます。これだけの規模で作品がそろうことは、かつてないことでしょう。
書は「読む」ものであると同時に、筆の運び方や紙の使い方といった造形的な美しさなどを「見て感じる」ものでもあります。とりわけ後者には、自筆であるゆえの個性、一つ一つの文字に見え隠れする喜怒哀楽の感情、すなわちホンモノだけが持つ魅力にあふれています。
この機会に、「書の王者」が放つ目映いばかりのオーラを一人でも多くの方にご覧いただきたいと思います。