東京藝術大学における陶芸教育は、1955年に陶磁器講座・研究室が正規に発足して以来、1963年には大学院を含む専門課程の陶芸講座として整備され、半世紀余りの歴史をもちます。その間、轆轤を中心とする伝統をふまえた技術習得に教育の重点が置かれながらも、加藤土師萌(はじめ)、藤本能道(よしみち)、田村耕一、浅野陽(あきら)、三浦小平二、島田文雄等、旺盛な作家活動を行う歴代教授の下、助手や学生たちが同じ釜の飯を食い、学ぶ場となった同講座からは、用の器はもとより造形的な作品に挑む作家まで、多彩な人材が輩出されてきました。
当館創立者、菊池智は現代陶の蒐集を通じ色絵磁器の重要無形文化財保持者(人間国宝)であった藤本能道(1919-1992)との親交を深めましたが、それを端緒として藤本の教授時代を中心に、陶芸講座の初期に在籍した作家たちの作品も多く収蔵していきました。現在それらは菊池コレクションの重要な一角を担っています。美術館開館10周年を迎えた本年、コレクション展として初めて同学出身陶芸家の作品を一堂に展示いたします。東京藝術大学の陶芸教育より生まれた作品をご覧いただき、やきものの可能性と魅力を感じていただく機会になればと存じます。