1920~30年代に成立した近代写真の動向は、カメラとレンズそして感光材料がもつ「機械性」に拠って多彩な表現を展開しました。それは写真でしかできない表現を目指したということができます。大型カメラを使いレンズの精密な描写力を追究したエドワード・ウェストン、ライカ・カメラを「眼の延長」として駆使して揺れ動く現実の瞬間を切り取ったアンリ・カルティエ=ブレッソンや木村伊兵衛、望遠レンズや広角レンズの視覚をカメラがもたらすもう一つの現実としてとらえ、特異なイメージを駆使した表現、極端なアングルや長時間露光、ブレの効果、顕微鏡や望遠鏡の視覚、パン・フォーカスとディファレンシャル・フォーカスなどカメラとレンズによってもたらされる視覚世界は、人間の眼では見ることの出米ないものです。カメラとレンズは、写真のはじまりの時代でもデジタル時代の今日においてもその基本に変わりはありません。時代を超えて写真表現の可能性が何によって支えられているかをさぐろうとするのが、この展覧会です。