奈良県出身で、当館が所蔵する万葉日本画の制作者の一人でもある松村公嗣展を開催いたします。
昭和23(1948)年桜井市に生まれた松村公嗣は、地元の畝傍高等学校を卒業後、愛知県立芸術大学美術学部絵画専攻(日本画)に入学、片岡球子に師事し、同大学院さらに同大学院美術研究科研修生を修了します。
作品は日本美術院展を中心に発表し、大学院在籍中に春の院展、再興院展に入選、また研修生時代には山種美術館賞展で入館者の投票による人気賞を受賞するなど、早くから将来を嘱望されていました。その後も春の院展、院展で人選・受賞を重ね、平成10(1998)年には日本美術院同人になります。
そして平成16年の院展でインド・ベナレスのガンジス川で沐浴する人々を描いた《ベナレス》が文部科学大臣賞、平成19年の再興院展では、尾張大国霊神社(国府宮)の儺追神事を題材にした《はだか祭り》が内閣総理大臣賞を受賞し、現代の日本画を牽引する一人として活躍しています。一方で、平成6年からは母校の日本画専攻の助教授、平成12年から本年3月までは教授として後進の育成にもあたり、優秀な人材を輩出してきました。本展では独特の感性で日本の四季の移り変わりの美しさを描いた風景画を中心に、各国の風物を取り上げた作品で構成します。
また、松村公嗣が平成22年春日大社に奉納した「平成おん祭り絵巻」全6巻(春日大社蔵)を特別公開します。保延2年以来毎年執り行われている春日若宮の祭礼(おん祭り)の様子を、多数の協力者のもとに5年の歳月を費やして描いた全長約65mの渾身の大作で、春日大社以外では初めての公開です。同時に開催いたします「深緑の万葉日本画展」では、~描かれた鳥たち~というテーマで、館蔵品万葉日本画の中から花鳥をモチーフに描かれた作品10点を展示いたします。