多田のこの写真集は、2009年の1月から12月まで、家の中から撮影した101点の写真からなります。
風景を家の中からじっくり撮った写真は定点観測のようでもありますが、自然の移ろいゆく姿は、時には厳しく、また優しく、家にきて果物を啄む鳥には暖かなまなざしが感じられます。水滴に映る風景さえも写真に映っています。その上に写真には不思議なヒト形が描かれていますが、これはシーニュと言って多田の音の楽譜にも等しいものですが、自由に空を山を飛び越えていきます。
この展覧会に出品する写真は、やはり長年撮っている秦野市の弘法山の写真ですが、二重露光して縦に切り取った写真は、多田のカメラで描いた風景画と言えると思います。それにシーニュがあり、透明メディウムで描くという多田独自の絵画と言って良い世界感があります。