ユダヤ人としてロシアに生まれ、フランスで活躍した画家マルク・シャガール(1887-1985)は、詩情あふれる色彩や愛をテーマとした作品により、絶大な人気を誇る20世紀の巨匠です。本展覧会は、国立トレチャコフ美術館(モスクワ)と国立ロシア美術館(サンクトペテルブルグ)が所蔵する代表作を中心に、国内の優品をあわせた油彩・水彩・版画など約100点を展示します。
97年におよぶシャガールの人生には、いつも魂のよりどころとなる“故郷(ふるさと)”がありました。生まれ育った第一の故郷ヴィテブスク。若き日に己の芸術を磨いた第二の故郷パリ。そして、第三の故郷は最愛の妻ベラ。画家が生涯求め続けた芸術は、“故郷”に根ざした限りない“愛”のかたちでした。
第二次世界大戦の勃発でナチスの迫害を避けてアメリカへ亡命するなど、ユダヤ人であるがゆえの宿命に翻弄されながらも描き続けた作品の数々は、今なお、そしてこれからも広大な“愛”で人類を包み込むことでしょう。
圧巻のスケール、初期の傑作「ユダヤ劇場大壁画」公開!
ロシア革命後の1920年に、シャガールはユダヤ劇場の空間を飾る大壁画を描きました。国情の変化により、壁画は巻き取られ、長らく人目に触れることなく美術館に収蔵されていましたが、約50年ぶりにモスクワを訪れたシャガールが壁画と対面し署名を入れました。本展では8メートル程の大作《ユダヤ劇場への誘い》をはじめ、現存する7点すべてを展示します。